上毛新聞「視点・オピニオン21」 2016/01/24掲載
農地の害獣防御 寄せない、刈る、囲う
前回は鳥獣害の構造、害をなす動物(以降「害獣」と呼ぶ)とヒトが戦うのもやむを得ない、しかし害獣といえども根絶やしにすべきではないというお話をしました。
今回は「いま、被害に困っている方がすぐにできることは何か」について考えていきましょう。最初に結論からお話ししますと、それは個々の農地を局地的に守る「防御」だと思います。
この「防御」は「常に」「誰にでもできる」と言えるでしょう。実際、既に実践されている方も多いと思います。また、情報量も豊富で、書籍も多数発行されています。
では、「防御」の方法を簡単にご紹介したいと思います。「防御」の基本は「寄せない」「刈る」「囲う」の三つとお考えください。
まず「寄せない」ですが、果樹を含む作物を実らせたまま放置せず、全て収穫しましょう。庭の果樹木も同様です。果実を利用しない果樹木は伐採しましょう。出荷できない作物など(農業残渣(ざんさ))を農地内に投棄することもやめましょう。「ちょっと寄って食べていきな」と害獣たちに言っているようなものですから。
そして、「刈る」です。耕作地など害獣たちに入ってほしくない場所の外周は害獣たちの姿が丸見えになる幅で間伐・除草を行い、害獣たちが潜む余地をなくしましょう。
さて「寄せない」「刈る」だけでは不十分で、「囲う」ことがそろって効果を発揮する、とお考えください。囲う際には「ワイヤメッシュ」や「防獣ネット」等が使われますが、害獣の種類に応じて資材を選び、適切な高さで設置し、地面との間に隙間を開けないことが重要です。高さが足らなければ跳び越されますし、隙間が開けば、そこから害獣たちは侵入します。
さらに害獣が触れたときに電気ショックを与える電柵との併用が効果を一段と上げるようです(施工方法などは専門書に譲ることにします)。
このように、「寄せない」「刈る」「囲う」を行うと、リスクの割に餌の実入りが少ないため、やって来る害獣は減る方向に向かうそうです。
餌が入手し難くなれば栄養状態が悪化し、冬に斃死(へいし)する個体数も増えると思われます。地域の個体数を減ずる効果も期待できるでしょう。それでも餌を食べにやって来る害獣は「農地に依存」しているわけですから、捕獲するのが効率的ではないでしょうか。
前回、富とその生産手段はヒトにとっての「餌」だとお話ししました。鳥獣害でお困りの方は、「自分の餌は自分で守る」の精神で、まずはいま一度「防御」を固めてみてはいかがでしょうか。
やや大ざっぱな話をさせていただきましたが、実は個々に防衛するだけでは問題もあるのです。次回はその隙間を埋めるべく、「鳥獣害対策のグランドデザイン」の話をしたいと思います。
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