上毛新聞「視点・オピニオン21」 2016/03/20掲載
鳥獣害防止のデザイン 集落、地域で対策を
さて、前回まで鳥獣害の構造から「個人が個別にできる」鳥獣害対策の具体的な方法までを考えてきました。第3回では「鳥獣害対策のグランドデザイン」について、考えていきたいと思います。
グランドデザインというと、難しい話のように聞こえてしまうかもしれませんが、鳥獣害対策を行うには個別の対策では不十分で、効果を期待するのであれば集落ぐるみ、地域ぐるみで対策を考えなくてはならない、ということなのです。
簡単なたとえ話ですが、小さな島に2軒の農家があったとします。片方の農家はイノシシ、シカ等の鳥獣害の被害にさらされていますが、もう一方は日々平穏、何事もないとしましょう。
作物はまったく同じものを作っていると仮定して、被害に遭っている農家がある日突然、獣害防止柵を自分の農地の外周に張り巡らせたら、何が起こるでしょうか。簡単なことで、今まで被害の出ていなかった、隣の農家に被害が出るようになるのです。
前回にお話しした「自分の農地は自分で守る」を、個別にやっていたのでは、これと同じことが起こりかねないのです。これを防ぐには集落ぐるみ、地域ぐるみで獣害防止の手だてを設計=デザインしなければならないということです。
これは、囲いや電気柵のような「ハードウエア」だけの話ではありません。囲いをどう手入れするのか、囲いをしてもやって来る動物に対して、誰が、どのように対応するのか、捕獲した動物を利用するのか、処分するのか、その方法は。
これらの仕組み、やり方のような「ソフトウエア」もデザインしなくてはなりません。さらに実行・検証し、検証結果をすぐに生かす(いわゆるPDCAサイクルですね)。そういった取り組みも含めて「グランドデザイン」ということになります。
さて、このグランドデザインを作り、実際に農地や宅地に適用していく上で、一番の障害になるのはやはり、「個別の事情」ではないでしょうか。
よく話し合っていただくことはもちろん重要ですが、放置すれば集落全体に、必ず何らかの影響が及ぶということをまず、共通認識とすることこそが最も重要であり、対策を進める上での鍵になるのではないでしょうか。
鳥獣害への共通した認識を図るための方法論を行政機関はお持ちのようです。集落単位での鳥獣害対策をお考えになる際には、早い段階から行政機関に相談しておくことも、大きな助けになるでしょう。
さて、鳥獣害に焦点を絞ったお話は今回まで。次回からは動物たちと人間、どう付き合うか、ということについてお話ししていきたいと思います。
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