上毛新聞「視点・オピニオン21」 2016/07/10掲載
雨の日の自然観察 隣の生き物の息吹を
あまりはっきりしない梅雨ですが、雨が降っているからといって「自然観察は全面休業」というわけではありません。この時期、カエルに代表される両生類たちは活動がとても活発です。オタマジャクシがカエルになり、上陸を始めるのもこの時期です。
昆虫たちも日ごとに数を増やし、にぎやかになってきています。実は梅雨時の「雨の自然観察」も見どころいっぱいで、楽しいものです。ただし、自然の中には危険が潜んでいるのも事実です。雨の日は足元も滑りますし、増水、土砂崩れ、落雷などにも注意しなくてはなりません。また、熱中症や過度の日焼けにも注意が必要ですね。
さて雨の中、もっと気軽に自然観察ができないものでしょうか。できますね。自宅の庭、近所の公園、近隣の緑地公園など、緑のあるところには、必ず生き物がいます(その「緑」も生き物です)。ただし、危険性があるのは野外であればどこも一緒、最低限の身支度と心構えは必要です。
まずは服装。長袖、長ズボン、帽子、はきなれた靴の組み合わせがお勧めです。自然観察では傘ではなく、両手が自由になる雨ガッパ(レインウエア)が良いでしょう。熱中症予防のために、飲料水は必ず携帯しましょう。そして、何より無理はしないこと。疲れたなとか、こわいな、という感情に素直に従いましょう。また、危険生物から身を守る方法は頭に入れておいてください。
ここからは楽しむための話を。自然観察の基本は、まず肉眼で興味を持ったものをじっくりと見つめることです。その生き物の持つ、すてきなところを見つけてやってください。一つ見つけると、思い入れも一段と深くなります。愛着を持ったその心で、またじっくり見つめてください。
道具でお勧めしたいのが、双眼鏡とルーペです。使ってみると、肉眼とはひと味違う、興味深い世界を見ることができるでしょう。筆記用具も忘れずにお持ちください。最初は「これ、何だろう」という言葉ばかりがメモ帳を埋めるのではないでしょうか。図鑑などをひも解き、疑問をゆっくりと調べていくのも、また楽しいものです。
僕は多くの人に、まずは身近な場所で、ごく普通に見られる生き物に親しみ、理解してほしいと願っています。希少種や色彩のことさら美しい種でなくても、「隣の生き物」だってかわいいし、美しいし、必死だ、ということを一人でも多くの方に感じ取っていただきたいと思います。
生き物たちとおなじ視線でいろいろな物を見つめていただけたら、きっと「自然の大切さ」を、肌身で感じていただけると思います。たまには雨の日も、「隣の自然」「隣の生き物」の息吹を感じに、出かけてみてはいかがでしょうか。
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