上毛新聞「視点・オピニオン21」 2016/10/28掲載

ヒトの立ち位置 自然の「すてき」感じて

 秋の長雨を越えた今、明け方の気温はぐっと低くなりました。いつの間にかトンボの姿は減り、草むらからは虫の声が聞こえます。ススキの穂も膨らんできて、秋本番、という風情です。

 今回は、今までのコラムを踏まえつつ、もう一度、「自然の中のヒトの立ち位置」を考えてみたいと思います。

 第1回は「人間も動物だ」ということ、だからこそ「エサ」を守るために動物たちと闘うことにもなる、そんな話をしました。一番覚えておいてほしいのは、人間のテクノロジーをその闘いに安易に用いれば、種の絶滅を引き起こしかねないということです。よく観察し、よく考えて効果的・効率的に事をなす、という精神が最も大切なのです。

 第2回では、獲(と)るよりも「防御」が重要だというお話をしました。防御のキーワード「寄せない」(誘引しない)、「刈る」(農地の周囲に鳥獣の隠れ場所を残さない)、「囲う」(効果のある方法でしっかり囲う)の三つをぜひ実践してください。

 第3回では「グランドデザイン」と称して、集落単位での対策の重要性をお話ししました。「誰かに獲ってもらえば良い」ではなく、「自分のエサは自分で守る」の精神で、鳥獣害対策を考えていただければと思います。

 さて、第4回以降では自然の中でヒトが立つために必要なことをお話ししたつもりです。まず、獲り過ぎないこと。獲り過ぎれば必ず、後の世代に資源不足(個体数減少)という問題を押し付けることになります。

 地球が生まれて46億年、その中で培われてきた自然界のバランスが崩れてしまうと、ヒトの手で調節を行うのは至難の業だというのは、皆さんもご存じのとおりです。 

そして、どんな時も穏やかな目で自然を見つめる、ということ。自然の「すてきなところ」をまずひとつ、見つけてください。見つかると、もっとよく見てみたい、そんな気持ちになるはずです。見つめるということが、自然をよく知るということにつながります。

 よく自然を知れば、より賢く自然の中で立つことができるのです。よく知れば、自然の中でほかの生き物に対して身勝手に振る舞うことも少なくなっていくでしょう。

 動植物にインパクトの少ないヒトの在り方、というのもきっと見つかると信じています。専門家のように、研究しなくても良いのです。どうか心を穏やかにして、自然を見つめ、「感じて」ください。

 思いやりを持って、自然に触れる機会をより多く持ってください。それがきっと、あなたが「自然の中でどう立つか」という命題に対して、力強いヒントを与えてくれるはずです。

 最後に僕の好きな、ブルース・リーの有名なセリフをご紹介します。「考えるな、感じろ」

 

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