桐生タイムス「森のルーティーン・タノさんの眼」 (第10回)
サルにおこられました (2017年1月7日掲載)
観察の森でのある日、「サルがいるよ」との知らせを受け、カメラを担いで行ってみると、現場にはこんな痕跡が。[写真1]
サルたちの目当ては、柿の実だったようです。
[写真1]
しかしこの柿、渋柿だという話です。渋柿は赤く熟さないと食べられません。
まだ熟していない頃に一度、サル達が少しかじった形跡がありました。
一度かじるとサル達には食べごろが分かるのでしょうか。それとも本当は、毎日ちょっとずつかじって確かめているのかな。
柿の実を食べつくしたサルたちは山を登っていきます。
目当ては木々の冬芽です。崖にとりついて熱心に食べています。[写真2]
[写真2]
冬の時期、みずみずしい食べ物に出会う機会はめったにありません。
そんな季節ではサルたちにとって、木々の冬芽と春先の芽吹きは大のごちそうなのです。
サルたちは木々に登って冬芽を食べつつ、山の上のほうに移動していきます。僕も後について歩いていきます。
群れを先回りしようと山道を登りきると、比較的大きなサルがやってきました。何気ない顔をして、僕の横を通り過ぎる様子です。[写真3]
[写真3]
ところが突然「シャーッ」と牙をむき僕の方に迫って、直前で止まりました。
「もうそばに来ないでよ」ということなんですね。
僕もつい、「おじさん、悪いやつには見えないでしょ?」と話しかけてしまいました。
サルにとって、ヒトは脅威です。
不用意に近づけばサルは恐怖から威嚇や攻撃をしてきます。恐怖を感じない距離を保ってやれば、彼らは何もしないはずです。
でも動物写真家である以上、サルの活き活きとした表情を撮るために距離を詰める必要もあるのです。
何となく、自分の仕事の罪な部分を感じさせられた、冬の午後でした。
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