桐生タイムス「森のルーティーン・タノさんの眼」(第4回)

愛情は本能? (2016年7月2日掲載)

梅雨も本番、雨がしとしと降る日もありますが、生き物たちはさまざまな姿を見せてくれます。
今回は幸運にもヒヨドリの巣に出会い、見守る事ができたので、その様子をお話します。

さて、6月17日に卵がかえり、4羽のひなが誕生しました。

親を待つヒヨドリのヒナたち
[写真1]

[写真1]を見ると分かるように、まだ眼は開かず、羽毛もほとんど生えていません。
親鳥は忙しそうに飛び回り、虫などをとって来てはひなの口に押し込みます。
そのかいあって、ひなの眼が開き、だんだんと羽毛も生えていくのが分かります。

ところが6月23日、本降りの雨が降りました。
生まれて6日の羽毛は、まだすき間だらけで雨を避けるのに十分ではないのです。
雨にぬれ続ければ、ひなはびしょぬれ、体温が下がり、弱ってしまうかもしれません。

ヒナのカサになる親鳥
[写真2]

どうなってしまうのだろうと見守っていると、親鳥が[写真2]のようにひなの上に羽を広げ、覆いかぶさって、雨よけになっているのです。
体も心なしかふくらませ、そっとひなたちの上にかぶさっているように僕には見えました。
親鳥の羽も驚きです。よく水を弾いていますね。

ひなたちも、親鳥の体温を感じながら、ほっとしているのではないでしょうか。
どうやらヒヨドリたちは、親鳥がひな達にごく当たり前に愛情を注いでいるようです。

さて、その愛情は「本能」なんでしょうか。だとすれば、どうやって形造られたのでしょう。
「親子の情」は、人間もヒヨドリも同じ物なんでしょうか。

ヒヨドリの愛情たっぷりの姿を見ていたら、またまた疑問がわきあがってしまいました。
「心の秘密」も生き物たちが教えてくれるのかもしれないな、そう感じさせてくれたヒヨドリの子育てでした。

 

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