桐生タイムス「森のルーティーン・タノさんの眼」(第6回)
生まれてくるかたち (2016年9月3日掲載)
この夏、幸運にも昆虫たちの誕生や子育てに何度か立ち会う事が出来ました。
今回はその様子を少しだけ、ご紹介しましょう。
まずは[写真1]を見てください。
オレンジ色の虫たちが集まっていますね。
[写真1]
生まれたばかりのクサギカメムシの幼虫たちです。
近くに立っている白い物、これは卵の殻です。幼虫たちは少しの間、卵の殻のそばで身を寄せ合って暮らします。
卵の殻には生きてゆくために必要な微生物が、親から子への贈り物としてくっついているそうです。
幼虫たちはこの贈り物を食べつつ、最初の脱皮の時を迎えます。
[写真2]はキボシアシナガバチの巣です。
[写真2]
ハチの幼虫は巣の個室に入ったまま、成虫になるまで働きバチたちの世話を受けます。
働きバチは、エサ運びの他たくさんの仕事を持っているようで、巣の上で何やら忙しそうに働いています。
右上の働きバチ、飛んでもいないのに羽ばたいています。
これは幼虫たちに風を送って冷やしている様なのです。
観察している間、働きバチ達は交代で幼虫に風を送っていました。
ハチの幼虫は、まさに「手塩にかけて」育てられます。
「生まれてくるかたち」が違えば、子供のころの過ごし方も、愛情の受け取り方も違うのですね。
生き物はそれぞれ「生まれてくるかたち」に応じて、誕生の瞬間、「本能」と「仕組み」という贈り物をもらっているように感じます。
それが時に「愛情」と呼ばれる物を形作るのかもしれません。
夏の日差しの下、虫たちを見つめてそんな事に思いを巡らせました。
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